運動あそびを取り入れたいと思いながらも、部屋の広さや子どもの発達に合わせて内容を考えているうちに、気づけばいつも同じ遊びになってしまう。そんな場面は少なくありません。
この記事では、幼児期の発達に合わせた運動あそびを、年齢別・場所別に分かりやすく整理しました。
柳澤運動プログラムの考え方をもとに、保育室のような限られたスペースでも無理なく・明日の保育からすぐに取り入れられる運動あそびをご紹介します。
監修:NPO法人運動保育士会
室内でできる運動あそび
園庭がなくても、保育室が狭くても、工夫次第でこどもの運動量は十分に確保できます。
ここでは、道具なしでも・少ない道具でも楽しめるあそびを厳選しました。
クマさん歩き(道具なし)
ねらい
腕の支持力・バランス感覚・体幹を育てる。指先の意識と集中力も養う。ハイハイと同様に全身の基礎的な力の土台を形成する。
あそび方
- 四つんばいの姿勢で両手はパーにしてつき、膝はつかずお尻を上げて、前を向いて歩きます。
- 慣れてきたらフープの中を歩いたり、コーンで作ったコースを歩くなどアレンジを加えます。
色のついたカップをタッチしながら歩く、背中にフープを乗せたりしても良いでしょう。
この遊びのポイントは3つです。
・手の指をしっかり開く
・お尻を高く上げる
・顔を前に向ける
小さい子は指先まで意識が届きにくく、指先だけでついていたり、手が丸まっていると怪我をしやすくなります。
事前の説明でパーの手を強調したり、途中で声掛けしてあげることも大切です。
スタート&ストップ(道具なし)
ねらい
合図で動いたり止まったりを繰り返すことで前頭前野を刺激し、興奮と抑制のコントロール・模倣力・集中力を育てる。「おりこうさん脳」の発達を促す。
あそび方
- こども達は、指導者の「スタート」の合図で一斉に動きます
- 「ストップ」の合図でその場でピタッと止まります。
合図は笛や手たたき、動作など様々な方法で行います。
慣れてきたら、動く時は「わー!」と声を出しながら動いて、止まっている時は声を出さずに静止する、止まる時に指導者と同じポーズをとるなど、アレンジを加えていきます。
これが上手にできるようになると、日常生活の中でも役立てることができます。
アレンジを加えることで、模倣力を養ったり、興奮と抑制のコントロールができるようになったりと、育つ力を増やしていくことができます。
こども達の育てたい力に合わせて、楽しくあそびを発展させてみてください。
前後カンガルー(縄1本)
ねらい
足の指先の力・腹筋背筋・バランス力・身体コントロール力・空間認知力を育てる。連続ジャンプで素早い判断力も養う。
あそび方
- 縄などの障害物を床に置きます。
- 障害物に当たらないように前後にジャンプをします。このとき、両足がバラバラにならないように両足を揃えたカンガルージャンプで行います。
- 腕を大きく振って、一定のリズムで行なえるように「前、後ろ、前、後ろ」と声掛けをします。
- 慣れてきたらスピードを上げたり、「前」と「後ろ」をランダムにするなど少しずつレベルアップします。
前に跳ぶのは簡単ですが、後ろに跳ぶ時は難易度が上がります。
着地で転びやすく、バランスを崩さないように踏ん張る必要があります。
この動作が腹筋背筋・身体コントロール力を育てます。
もし苦手な子がいたら、手をつなぐ補助をしてあげましょう。
「前」「前」「後ろ」などランダムにしながら、聞く力や判断力、集中力もしっかりと育てていきましょう。
次の章からは、年齢ごとの運動あそびをご紹介します。
こどもの発達には段階があります。
年齢に合った動きを提供することで、無理なく楽しく力を育てることができます。
1〜2歳の運動遊び
1歳を過ぎると一人歩きが始まり、全身運動が上達してくる時期です。
大人の真似をしたがる時期でもあるので、それをうまく使って、さらに発達を促していくのがおすすめです。
脳の神経系の発達が著しく進んでいるこの時期は、姿勢の変化やバランスの感覚、様々な感覚への刺激が重要です。
フープジャンプ
ねらい
両足を揃えてジャンプする力・バランス感覚・身体コントロール力を育てる。低い高さからの跳び下り・跳び上がりの基礎を身につける。
あそび方
- まず、こどもと向かい合って両手を持ちます。
- 両足を揃えて、「1,2の」で膝を曲げて「3」でジャンプします。
このジャンプで、低い高さからの跳び下り、跳び上がりにも挑戦してみましょう。 - 2ができたら、フープを複数用意し、まっすぐに並べて置きます。
- このフープの中だけを両足ジャンプで進んでいきます。
こどもの年齢によっては、こどもがやりやすいように
大人が1つ前のフープに入って、両手をつないでジャンプをして補助をしてあげましょう。
ジャンプあそびでは、両足を揃えてジャンプをすることが一番のポイントになります。
両足を揃えてジャンプする力が、バランス感覚・身体コントロール力を育てます。
小さい頃からそのことを意識してできるように導いていきましょう。
ワニさん歩き
ねらい
腕の懸垂力を育て、鉄棒あそびで必要な力をつける。足を股関節から開く力・足の指先の力も育てる。
あそび方
- うつ伏せになり、胸までしっかり床につけます。
- 両手は指を開いてパーにし、交互に前に出して腕を引きつけるようにして前に進みます。
足は股関節から開いて、指先で床を蹴るようにします。 - 慣れてきたら2人ペアでじゃんけんし、勝った方が足を開いてトンネルを作り、負けた方がわにさんでくぐる「トンネルわにさん」に発展させます。
胸やお尻が上がらないように、見本を見せながらわかりやすく伝えてあげてください。
足の指先で蹴ることがうまくできない場合は、こどもの後ろで足の裏を押すように補助してあげましょう。
最近は足を股関節から開くことが苦手な子がとても増えているので、日頃から股関節を開くようなあそびを意識して提供してみてください。
抱っこからぐるりんぱ
ねらい
逆さまの感覚・回転感覚を身に付ける。五感を刺激し脳の発達を促す。親子のスキンシップを通じて安心感の中で運動経験を積む。
あそび方
- こどもと向かい合って立ちます。
- 手のひらをこどもに向けて出して両方の親指を握らせます。
- こどもの手を包むようにつかんで「1,2の3」で跳び上がらせ、大人のお腹に足をまわしてしがみつきます。
- 両足でしっかりしがみついたら、手を放してそのままこどもは後ろに倒れて逆さまになります。
逆さまになった際に、こどもが手をバンザイにできていたら恐怖心なく逆さまになれています。 - 大人はそこから持ち方を変えてこどもの腰の辺りを持ち、回るようにして着地させます。
よくある「ぐるりんぱ」は手を持って大人の足を駆け上がって回りますが、小さいうちはまだ肩がねじれて危険です。
この遊びは肩をねじらずに回ることができます。
逆さまを恐怖と感じるか楽しいと感じるかで、こどもの活動の幅や自信、気持ちの面に大きく影響します。
3〜4歳の運動あそび
3歳頃になると、ある程度意識をして目標に向かって取り組み頑張ることができるようになります。
身近な大人からの評価を欲しがる時期でもあるので、「できた!」をたくさん作りながら自己肯定感を高めていく働きかけが大切です。
また、年少後半からは基本運動から「協応運動」へと移行し、体を器用に動かす巧緻性を養っていきましょう。
ぶら下がりジャンプ
ねらい
腕でぶら下がる力(懸垂力)・体幹・バランス感覚を育てる。目標に向かって頑張る力・自己肯定感・やる気を養う。
あそび方
- まず鉄棒の前後に1つずつフープを設置します。
(直径30cmほどの小さめのフープ、なければ市販のホースを切って作ります) - こどもは手前のフープの中に入って鉄棒を握ります。
- 体を何度か前後に振ったら、前のフープの中に着地します。
着地ではふらふらしないように意識し、それぞれ好きなポーズをとってみても良いでしょう。
たくさん体を振れると良いので、回数を数えてみたり友達と競争してみるのもおすすめです。
鉄棒の下に『落とし穴や爆弾に見立てたもの』を設置しておくと、落ちないように必死でぶら下がって頑張れます。
最初にその動きの大事なポイント・ダメなポイントを明確にしてあげましょう。見本として視覚的に示してあげるのが効果的です。
こどもが「見て見て!できたよ!」と声をかけてきた時にはぜひたくさん褒めてあげて、自己肯定感を高めながら自信ややる気を伸ばしていってあげましょう。
ミニハードル走り
ねらい
体を器用に動かす巧緻性・空間認知力・ハードルの高さに合わせて体の動きをコントロールする力を育てる。跳び箱・大縄跳び・鉄棒の逆上がりにも必要な「協応運動」の習得につなげる。
あそび方
- 低めのハードルを複数設置し、跳び越しながら走っていきます。
(ハードルがない場合は椅子の足などにゴム紐をくくりつけて代用が可能です) - 高さはこどもの膝くらいの高さから始めましょう。
- 慣れてきたらコースを直線だけでなくカーブのあるコースにしてみるなどのアレンジもおすすめです。
スムーズに進んでいくために、
・つま先で走ること
・腕を振って走ること
・ハードルの前で一旦止まらないこと
・両足ジャンプではなく走りながら跳んでいくこと
これらを見本として見せながら伝えておきます。ジャンプが大きすぎても小さすぎてもうまく進んでいくことができないので、繰り返し行いながら体の動きをコントロールする力をつけていきましょう。
こども達に合わせて無理なく楽しめるように提供してみてください。
トンネルわにさん
ねらい
鉄棒で必要な腕の引き付ける力・足の股関節から開く力・足の指先の力を育てる。判断力・瞬発力も養われ、ペアでのあそびによって社会性も育てることができる。
あそび方
- こども達は2人ペアになりじゃんけんをします。
- じゃんけんに勝った人は、その場で立ったまま足を開いてトンネルを作ります。
- 負けた人はそのトンネルの間を、うつ伏せで進むわにさんになってくぐります。
- 慣れてきたら、トンネルもいろいろなポーズで作ってみてください。
トンネルに当たらないようにしましょう。うつ伏せで胸までしっかりと床につけた低い姿勢のわにさんになることがポイントです。
わにさん歩きは、手を交互に前に出して体を引き寄せ、足を開いて親指で地面を蹴りながら進む動きです。
ぜひ少しずつ発展させていきながらたくさん遊んでみてください。
4〜5歳の運動あそび
4〜5歳になると、体の動きが複雑化し、ルールのあるあそびや友達と協力するあそびが楽しめる時期です。
目標に向かって粘り強く取り組む力や、自分の動きをコントロールする巧緻性が一段と発達します。
就学に向けた基礎的な身体能力の仕上げを意識した関わりが大切です。
色分けすずめポイントジャンプ
ねらい
鉄棒での懸垂力・足の振り動作・着地コントロール力を育てる。宣言した場所に着地することで空間認知力・集中力・見通す力を養う。
あそび方
- 鉄棒を握って跳び上がり、肘を伸ばして顔を上げて前を見ます。
足は閉じてまっすぐ伸ばしておきます。 - そこから足を前後に大きく振って反動をつけます。
- 後ろにジャンプして両足で着地します。
着地点の辺りには4色ほどの線を5〜10cm間隔でつけておき、まずは線を意識してジャンプする練習をします。 - 慣れてきたら、事前にどの色に着地するか宣言してからやってみましょう。
ポイント制にして競争にしてみたりするのもおすすめです。
足の振りが小さいと後ろに大きく跳ぶことができないので、鉄棒に顎や歯をぶつけてしまうことがあります。
こどもの胸に手を当てておき、ジャンプのタイミングで少し後ろに押すように補助をしてあげましょう。
まずは大きなジャンプよりも、狙った位置に正確に着地することを大事にしてください。
ジグザグかけっこ
ねらい
空間認知力・体の巧緻性を高める。左右への方向転換動作を素早く行う力・足の指先や足裏をしっかり使う力(土踏まず形成にも効果的)を育てる。
あそび方
- 床に縄やテープでジグザグのコースを作ります。
(コースの長さは10〜15mほど) - こども達はスタートラインに並び、スタートの合図と共に後ろから指導者が追いかけます。
- こども達はこのコースの中をコースからはみ出さないように走って逃げます。
慣れてきたら、ジグザグの角度のきついところを作ってみたり、コーンを一定間隔で置いてコースを作るのもおすすめです。裸足で行うとさらに効果的です。
ジグザグコースをはみ出さないように進むためには、コースをよく見て先を読み、体の動きをコントロールする必要があります。
左右に方向転換する時には、先に下半身を切り返してから上半身を進行方向に向ける動作になります。
これが素早くできるようになると、スムーズにジグザグに進んでいくことができ、巧緻性を高められます。
こども達の育てたい力を見極めながら、工夫して提供していきましょう。
タイミングジャンプ(大縄跳びの前段階)
ねらい
動いている縄をよく見てタイミングを合わせてジャンプする力・集中力・判断力を育てる。大縄跳びへの移行につながる基礎力を養う。
あそび方
- ビニールテープなどを使い、30cmほどの間を開けて床に2本の線を引きます。
- こどもはこの線の中に入り、そこから出ないように伝えます。
- 横から蛇に見立てた縄を少しずつこどもの足元に近付けていき、「蛇が来たら噛まれないようにジャンプしてね」という動機付けで、縄が足元にきたらジャンプしてあそびます。
このあそびが上手になると、連続ジャンプやリズム跳びへと発展できます。
「2本のラインの中から出ないように真上にジャンプすること」、「動いている縄をよく見てタイミングを合わせてジャンプすること」がポイントです。
縄がくるまで我慢できずにジャンプしてしまう子や、縄を見て跳ぶのが苦手な子もいます。
ゆっくりなリズムから始めたり、最初はこどものジャンプに縄の動きを合わせてあげたりしながら行なってみてください。
保育士が押さえておきたい3つのポイント
ポイント①:楽しさが力を育てる
強制や義務感のある運動はこどもの意欲を下げてしまいます。
「もう1回やりたい!」とこどもが自分から動けるような設定や声かけが大切です。
こども達が夢中になれる工夫が、効果的に力をつける最大のポイントになります。
ポイント②:できた→次へ、という段階が自信を作る
難しすぎず、簡単すぎない「ちょっと頑張ればできる」レベルがこどもの自己肯定感を育てます。
一律のメニューではなく、一人ひとりの今の発達段階に合わせて提供することを意識しましょう。
スモールステップでの成功体験の積み重ねが、こどもを次のステップへ自然に導きます。
ポイント③:繰り返しが力になる
一度できるようになっても繰り返さないと力は定着しません。
毎日の生活の中に少しずつ組み込んで、継続できる仕組みを作ることが重要です。
達成した後も繰り返し行うことが、次のステップへの土台になります。
なぜ運動あそびがこどもの発達に重要なのか
運動は体を強くするだけではありません。
10分ほどの軽い運動でも、脳の「前頭前野」の血流が増え、感情コントロール・集中力・判断力の発達が促されることが研究で明らかになっています。
私達の脳みそは、産まれてから小学校入学の6歳頃までの間に急速に発達し、そのほとんどが完成します。
つまり、この乳幼児期の間にどれだけ脳に良い刺激を与えてあげるかが、その後のこども達の能力に大きく関わってきます。
私たち運動保育士会は「保育現場で運動あそびを楽しく・正しく提供できる大人を増やすこと」をミッションとして掲げ活動を行っています。
こどもの運動経験の質は、大人の知識と関わり方によって大きく変わります。
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友だち追加後、幼児期の運動あそびをまとめたPDF資料を無料でお届けします。明日の保育からすぐに使えるアイデアを詰め込んでいます。

